泌尿器疾患に効く 漢方



菅谷 公男(株)サザンナイトラボラトリー 代表取締役社長 医療法人センダン北上中央病院泌尿器科 院長)

川嶋 健吾(横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター  客員教授 つちうら東口クリニック 院長)

 

発行年 2016年7月

分 類 東洋医学

仕 様 A5判/総頁数220/本文204/55図(3カラー)/12表

定 価 2,970円(本体 2,700円+税10%)

ISBN 978-4-908296-03-1 在庫僅少


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漢方療法を志す泌尿器科医はもとより、すでに実地臨床に漢方療法を取り入れておられる医師方々にもご一読いただきたい一冊。漢方の基礎から臨床応用までを西洋医学と並行して詳しく解説します。 

漢方薬は世界的に年々需要が増加しており,本邦でも2007年から漢方医学教育は全国の医学部全てで行われるようになり,漢方医学の重要性が認識されてきている.しかし,多くの臨床医にとっては漢方薬の使用は製薬会社からの情報や医師仲間からの情報に依存していて,一つの疾患や症状に対する一つの漢方薬といった意味合いのことが多いのではないだろうか.また,個々の漢方薬の対象疾患・症状には多くの様々な症状の記載があり,特有の用語もあって,漢方薬を使いこなせている医師はごく一部のように思われる.


それでも,漢方薬においては,西洋薬でもそうであるが,ビギナーズラックとも言うべき著効例に出会うことがあり,それが漢方薬を処方する契機となり,同様の特徴のある患者を探して処方するようになる.しかし,その後はうまく治療できない経験をした医師は少なくないはずである.西洋薬でも効果の得られないことはしばしばで,その場合には他剤に変更するか増量して対処するが,漢方薬が効果のなかった時には,証を間違ったために効果がなかったのか,それとも漢方薬自体の限界なのか分からず,漢方薬の使用を止めてしまうことが多い.しかし,西洋医学と漢方医学の基本的な考え方の違いを理解すれば,打率がアップし,西洋薬と漢方薬をより良く使い分けられ,躊躇なく併用する事ができるようになる.


本書は,第一線で活躍している臨床医を対象として,西洋医学的なアプローチの基本を再確認しながら,日々の診療の中で漢方薬というツールがどのように利用できるのかを述べた漢方入門書である.古典や歴史

的に継承されてきた口訣(重要な運用ポイントの言い伝え),薬理学的データ,臨床データなど,様々な漢方エビデンスを交えて,臨床現場で漢方薬を活用する理由や根拠を示すことに心掛けた.


本書が洋學社から出版されるに至ったのは,2007年に永井書店から出版された「よくわかって役に立つ排尿障害のすべて(西澤 理編集)」に菅谷が「排尿障害と漢方治療」を分担執筆させて頂いたご縁による.洋學社の代表取締役社長の吉田收一氏は,永井書店を辞して2015年に洋學社を設立されたが,漢方初心者の泌尿器科系診療医向け解説書の出版を考えて菅谷に話を持ちかけた.菅谷は漢方薬を処方はするが漢方専門家ではないため,学生時代に漢方を教えてくれた同級生で漢方専門医の川嶋に相談し,二人で執筆することとなった.菅谷は泌尿器科医として,川嶋は漢方医として本書を執筆したが,当初予定していた簡単な漢方入門書のレベルを超えて,充実した専門書ともいうべきものとなった.著者らは,本書で漢方医学的考え方を理解して頂いたなら,まずは漢方薬を実践で使って頂きたいと思っている.そして,うまく治療できない場合には本書を再読して漢方医学的に診立てを修正し,他の漢方薬に変更するなど,実地医療に本書を使いこなしてほしいと願っている.本書の制作にあたっては洋學社の吉田收一氏に多大なるご協力を得たことを記して,感謝の意を表したい.


2016年6月

著者ら識す

目  次

 

 

第1章 漢方医学と西洋医学が共存する新たな医療の時代

1.漢方医学を扱うメリット

2.漢方は西洋医学のエビデンスの背景を考える医学

3.西洋医学と漢方医学を共存させる根拠となる標本同治

4.漢方医学の根幹となるシステム論の基本的な考え方

5.漢方医学が考える病気の概念

6.漢方薬の特徴

7.漢方薬の効果と副作用

8.甘草の効果と副作用

9.臨床にすぐに役立つ漢方医学の学び方

10.漢方医学と西洋医学の着眼点の相違

 

第2章 漢方医学の基本

1.太極,陰陽,気血水,五行

2.臨床で実証されている漢方医学の重要な基本法則

3.漢方の証

 1)証は一つではない

 2)虚証と実証

 3)日本漢方の証「方証相対」と中医学の証「弁証論治」

 4)証を把握する診断技術について

 推薦図書

4.漢方における腎の概念と八味地黄丸

 

 

第3章 泌尿器科領域の漢方薬適応疾患

1.夜尿症

  病態

  治療

   生活指導 理学療法 手術療法 通常の薬物療法 漢方薬による薬物療法

   治療上のアドバイス

2.膀胱炎

  症状と診断

  薬物治療

   漢方薬による薬物療法

  治療上のアドバイス

3.過活動膀胱

  病態

  症状と診断

  治療

   理学療法 薬物療法 漢方薬による薬物療法

  治療上のアドバイス

4.腹圧性尿失禁

  病態

  症状と診断

  治療

   理学療法 薬物療法 漢方薬による薬物療法 手術療法

  治療上のアドバイス

5.前立腺肥大症

  病態

  症状と診断

  治療

   薬物療法 漢方薬による薬物療法  漢方薬と通常治療薬の併用に関する考え方

   手術療法

  治療上のアドバイス

6.前立腺炎

  病態と診断

  治療

   一般的薬物療法 漢方薬による薬物療法

  治療上のアドバイス

7.精巣上体炎

  治療

  治療上のアドバイス

8.陰嚢水腫

  治療

  治療上のアドバイス

9.腎結石症・尿管結石症

  治療

  治療上のアドバイス

 10.勃起障害

  診断

  治療

  治療上のアドバイス

 

第4章 主要な頻用処方の適応ポイント(科学的エビデンスを含む処方解説と類似処方の鑑

     別ポイント)

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

 適応疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:気血水論)

 目標となる症状

 月経痛・月経不順における他の処方との証の鑑別

 桂枝茯苓丸の科学的エビデンス

五淋散(ごりんさん)

 適応疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:気血水論)

 目標となる症状

 膀胱炎における他の処方との証の鑑別

猪苓湯(ちょれいとう)

 適応疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:気血水論)

 目標となる症状

 尿路結石における他の処方との証の鑑別

 結石の疼痛緩和

 猪苓湯の科学的エビデンス

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

 適用疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:臓腑経絡論)

 目標となる症状

 「疲労倦怠」における他の処方との証の鑑別

 補中益気湯の科学的エビデンス

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

 適用疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:気血水論,臓腑経絡論)

 目標となる症状

 小児の虚弱体質における他の処方との証の鑑別

八味地黄丸(はちみじおうがん)

 適用疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:臓腑経絡論)

 目標となる症状

 糖尿病における他の処方との証の鑑別

 八味地黄丸の科学的エビデンス

 八味地黄丸の医療用製剤について

清心蓮子飲(せいしんれんしいん)

 適用疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:臓腑経絡論)

 目標となる症状

 排尿障害における他の処方との証の鑑別

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

 適用疾患

 処方構成

 証のポイントと症状(理論:三陰三陽論)

 目標となる症状

 こむら返り,足のつりにおける他の処方との証の鑑別

 芍薬甘草湯の科学的エビデンス

 芍薬甘草湯を長期に安全に使用するための一考察

 

 

第5章 漢方薬の疑問点・問題点(次の一歩を踏み出すために)

 1.漢方薬を選択するうえでの疑問点・問題点

 2.漢方薬を処方するうえでの疑問点・問題点

 3.漢方薬を内服するうえでの疑問点・問題点

 

附録表

索 引