<序文より>
医師事務作業補助者およびクラークは,医師の診療記事の記載・入力,処方せん作成,診断書などの書類作成等を通じて医師業務の負荷軽減を担うとともに,病院の診療の質にかかわる多くのデータを集積,出力するブレインとしてもそのニーズが高まっており,現在は医療機関にとどまらず,介護分野や地域包括ケアシステムへも活躍の場を広げることが期待されている。
このような業務は,電子カルテを代表とする医療情報システムを介しての代行入力,統計,データ分析などが基盤となっているが,これまで医師事務作業補助者やクラーク向けの電子カルテのテキストはほとんど作成されておらず,法律などのルールについてもわかりやすくまとめられたものはない。その一方で,所属する病院の医療情報委員会やクリニカルパス委員会,診療録委員会など多くの会議メンバーとして医師事務作業補助者・クラークが出席することや,電子カルテの導入や更新にコアスタッフの一人として参画することもあたりまえとなってきた。
かつて「オタク」「マニアック」「あまりに専門的」ともとらえられていた医療情報システムについて学ぶ機会は決して多くはなく,いきなり会議に出たとしてもわからない単語で何も発言できなくなってしまったというような経験はないであろうか。
本書は,短時間で読み流すことで医師事務作業補助者やクラークが病院の電子カルテの基本的知識を身につけられるようになることを目的に,筆者が行ってきた各種の講演や質疑応答の記録などから,知っておくべき電子カルテの基本をできるだけ現場の事例にあげて,より実践的にまとめたものである。医師事務作業補助体制の歴史やルールについては省いてあるので成書を参照してほしい。
臨床現場にいる事務職員が,医療職や院内他部署とのディスカッションを堂々と行え,自分たちの部署の改革アイデアを提言できるようになることを期待する。本書を何回も読み直し,多くのメモ書きを加えて携えていただければ幸いである。
なお,本書では,診療報酬上の医師事務作業補助体制加算の算定対象となるかどうかにかかわらず,代行入力や書類作成など医師の事務作業補助の業務をしている事務スタッフを「クラーク」,そのなかで,医師事務作業補助体制加算の算定対象になっているクラークを「医師事務作業補助者」と呼び分けて記載している。